2016年11月28日月曜日

【舞台ist】vol.2-2 浅利慶太さん

舞台ist 

私たちを楽しませてくれる舞台づくりのプロに話を聞く企画”舞台ist”。年間観劇数100本を越えるTheatre at Dawnミナが気になる人を取材し、不定期で連載します。


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Vol.2-2 浅利慶太さん

「深く感動できる、フランス演劇の傑作。」



夏に引き続き、浅利慶太さんにお会いする機会をいただきました!1953年に20歳の若さで劇団四季を立ち上げた浅利慶太(あさり・けいた)さん。ところで皆さんは、劇団四季の創立記念日は7月14日=フランス革命の日だということをご存知ですか?四季の創立メンバーは、若き浅利慶太さんほか慶應・東大でフランス文学を学んでいた若者達。劇団四季はアヌイやジロドゥなどのフランス演劇から立ち上げられた新劇集団であることは、意外だけれど有名な話。今や日本全国にミュージカルを広めた立役者ですが、ルーツは「フランス文学、フランス演劇」なんですね〜。現在は個人の演出事務所を立ち上げ、東京・浜松町の自由劇場を拠点とした演劇活動を続けている浅利さんの次なる作品は、12/7〜12/11に上演される「アンチゴーヌ」。まさに、噂のアヌイさんが書いた戯曲です。それってどのようなお芝居なんでしょうか!本番に向けてお稽古が進む東京・代々木のアトリエにお邪魔し、浅利さんとのインタビューを行いました。

※本インタビューはメディア各社によるグループ形式で実施されました。

= INTERVIEW =

Dawn:よろしくお願いします!今回はジャン・アヌイ作「アンチゴーヌ」ですね。

浅利さん:劇団を創立したのが1953年。アヌイの「アルデールまたは聖女」を最初にやりました。第2回公演が1954年の春先にやった「アンチゴーヌ」。あの頃は20代でしたから、懐かしいですし、素晴らしい作品だから、時々は上演したいんです。お客様も若い方が増えていく。最初に劇団四季で見てくださった方が当日20才だったとしても、、、ね? しょっちゅう上演するべき、超一流の傑作ですよ。


Dawn:演出事務所を立ち上げてから、前回が「李香蘭」で、ジロドゥ「オンディーヌ」、加藤道夫さん「思い出を売る男」、そして「この生命誰のもの」・・・どうやって作品を決めているんですか?

浅利さん:いつも、次なにやろうかなぁ〜って、お客様が喜んでくださるだろうなと思うことを。来年の夏はミュージカル「夢から醒めた夢」が決まりました。丁寧につくりますよ。芝居ってあんまり先のことを考えるとまずいんですけどね。恋愛と一緒!目の前の人の夢中にならないと。でも来てくださる方を裏切らない芝居をやります。


Dawn:「夢から醒めた夢」大好きです!「李香蘭」が9月だったので、年内にもう一つ観られるのは嬉しいです。

浅利さん:ありがとうございます。まぁ、稽古期間も一ヶ月くらいで丁寧にやってます。

Dawn:お稽古、若い俳優さん達も参加されていますね。進み具合はどうですか?

浅利さん:順調に、いまは追い込みかな。練り上げているところ (注: 取材時) 。もう少ししたらリラックスさせるほうに重きをおきます。いつの時代も俳優はあまり変わらないけど、今の若い子はずっと深いというか、雑多なものがなくてシンプル。レベルの高い作品ですから、一生懸命、感動しながらやってますよ。


Dawn:「アンチゴーヌ」が前回上演された2005年に出ていらっしゃったのは、野村玲子さんと坂本里咲さんのおふたりですね。浅利さんご自身の変化は?

浅利さん:演出は今まで通りです。でもドラマをより深く感じることができているかな。前から作品は理解しているけど、カッカしながらやっていたところを、もっとお客様に伝わりやすいように、思想的にしなやかに。"やってるぞー"じゃなくて、淡々と見せながらも深いっていうか。そんなカッカする歳でもないので、リラックスしてやってます。

ただ、僕は父親が小山内さん(注:小山内薫さん)と築地小劇場をつくった最初の人間で、大叔父が二代目 市川左團次。そういうものを感じながらやっているから、新劇の理念はしっかり引継いでいるつもりです。当時も新劇に興味を持つ人と持たない人はいたけど、個性豊かでキラキラしてて、存在感があったな。




Dawn:そういえばアヌイさんは、実はトニー賞の演劇作品賞も取っているような現代の作家で、浅利さんは実際にお会いしたこともあるんですよね。

浅利さん:パリで会いました。作家って、作品を読んだときに感じる印象と違うんだ。生き方、、在り方が不思議な人でしたよ。でも僕だって、アジアの国で自分の作品を上演したいと言っているような若者で、聞いてみたらフランス文学なんていう専門だし、フランスと日本の距離も今とは違いますから。お互いに不思議だったかもしれないね。(笑)

ジロドゥにアヌイ。今のフランス、、いやヨーロッパ全体を見ても、やっぱり才能がありますよ。僕は学生時代は加藤道夫さん、芥川比呂志さんという先輩方に育てられて、ジロドゥ、アヌイといったら大変な作家。そういう意味では憧れだった。


Dawn:そんなアヌイさんの書いた「アンチゴーヌ」の魅力って何でしょう?

浅利さん:アンチゴーヌという女性については、僕は演出家なんで"感動的存在"として見てますけれど。(笑)超一流の作品というのは、やる人間にとっても常に新鮮だし、何度も観てるお客様にも新鮮だと思います。主題が深いということと、作品の出来が非常にレベル高い。感動を受け取ることができる。それと、尺があまり長すぎない。良い芝居ですよ。ジャン・アヌイの傑作です。


Dawn:最後に私のお友達や、まだアヌイを知らない方へメッセージをお願いします!

浅利さん:劇団四季の頃からやっている世界的レベルの作品。ジロドゥやアヌイは、シェイクスピアとか、演劇の理念をしっかり引継いでいます。上っ面で書いてあるものとは全然違うことがわかると思う。ぜひ劇場でご覧になってみてください。

Dawn:ありがとうございましたー!では、カメラ目線で1枚♪パシャっ

( ・◡͐・)’◡͐’)`◡͐´)°◡͐°)^◡͐^)´◡͐`)


最後に)

浅利さんは、ずっと続けているお芝居づくりに対するまっすぐなパワーが、やっぱり最高に格好よかったです。迷いなく「目の前に夢中になるんだ」とおっしゃっていたし、今でもワクワクしていて他のこと考えてませんっていう、永遠の演劇青年な感じ!稽古写真でおなじみのダウンジャケットを取材のために着替えてくれたり、やわらかいソファに座っていたのが「写真撮るのに、これじゃ姿勢がやばいよね!」と高さのあるイスに座り直したり、最後まで気持ちをこめて、丁寧ににこやかに話してくれました。

ジロドゥ作「オンディーヌ」から始まった浅利さんの新しい創作活動を振り返ると、加藤道夫作「思い出を売る男」、浅利さんが後の世代に伝えたいと繰り返し語っている戦争モノ「ミュージカル 李香蘭」などなど、そうですよね、次はジャン・アヌイに決まってますよねと思えてしまうほど、納得感のあるラインナップ。前回公演のチャンスを逃していて、「アンチゴーヌだっけ?アンゴチーヌだっけ?」みたいな状況だった私ですが(!)、じぶんの信念と現実の狭間で戦う普遍的なストーリーであることや、とにかく最強オーソドックスの"良い芝居"なんだと浅利さんから伺うことができて、本番を観るのがすっかり楽しみになりました。

ふう。緊張した。
(๑・‿・๑) 貴重な時間をありがとうございましたー!




Photo: やなパパ

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公演情報

12/7(水)〜12/11(日)浜松町・自由劇場で上演